日曜日, 5月 07, 2017

学会発表を終えてー3

の連休である。暦通りの休みとなり、連日未着手だった資料の再検討に追われている。

指導教官からは昨年4月以来、老化と加齢のため今後の指導は困難との但し書きが来ており、今年も同様であるが今年はさらに追加が加わった。年ごとに万事が億劫になり文章を考えるのさえ 面倒になりました、などとある。

ただの加齢のよるものなのか、お医者さんと種々相談しておりますので、ご放念くださいなどとある。心配した病状への不安はあまり迫っていないようでだいぶ安心しました。

・・個人差が大きいことですが、先の見えた(限られた)現在は貴重であると思います。 後悔のない充実した時を過ごされるよう願っております。・・・

*赤字部分はハガキの余白に挿入されたボールペンによる手書き 他はワープロ文字。

なんども時間をおいて読みかえしてみると、手書きの部分を含む一部はどうやら期待とも激励とも取りうる文章だと思えるようになって来た。後、論文(原則、英文)2報で学位請求権が発生することは何年も前から囁かれて来たが、それ以前の教授も小生の指導教官がOKしたらいつでもおれは出すよと、と言われて来た。ただ、肝心の指導教官は、あなたはまだ若い!、指導は甘やかさず厳しくやります。と宣言されていたから、当初から厳しいと覚悟はしていたが、・・・。

今度の学会発表で今まで本発表(論文)していないやりかけの一応整理がついた程度の学会発表は本論が未だ未発表でしかも全体として大幅な枠組みが変わることがはっきりし、修正してから発表しなければならない、と自覚しそれも資料付きで元教官に伝達しておいた。

それは当初は理解しており、まだ本格発表ではないのでカッコ付きの条件のように思えていたからだ。
これはすでに学会発表で使用した年齢別枝の呼吸速度を示す式の各係数だが、1、2、3、・、とあるが当年枝を示す0に相当する欄がない。これは明らかに手落ちとも言えるのだが、今回の発表で当年枝資料を欠いた枝の呼吸量全体は当年枝の呼吸も数回にわたって計測した旧林試の試料と比べるとどの個体も幹では差が2%程度しかなかったが、枝では全体的に83%程度一様に低下した推定結果となってしまった。アカマツを観察していれば春先急激に伸長するアカマツの当年枝は組織が柔らかく中には自重に負けて下向きに垂れてしまう穂先(枝先、しかも伸びつつある新葉つき)すらあることから、指導教官は測定を躊躇したのであろう。ただ、幹だけは春先でも呼吸を測定はしている。


この春先の枝先端はいち時期とはいえかなり高く、どれくらいかまでかは未検討であったので、帰ってから早速検討した。すると年間を通すとおよそ概算で一年枝に比べて3.43倍ほど高かった。1.003*0.146*枝直径^1.4057が1年枝の呼吸とすれば、同一直径枝であれば3.43*1.003*0.146*枝直径^1.4057ほど高いということになり、はかりづらいからという理由では無視できないことになる。三名連名で発表されただけのことはあり、比較的人件費に恵まれていた林業試験場だけのことはある。かたや単身で試験地に泊まり込んで一人同種のIRGA(赤外線ガス分析計、ロックフェラー財団からの援助)を使っていても手助けしてくれるのは技官たちだけで時間外の協力は頼めず、他方林試では一応皆研究者であり長年の協力者でもあったから、こうした計測では威力を発揮できたのだろうとおもう。特に春先の当年枝の呼吸はごく一時的ではあるものの、針葉の呼吸速度と同一なのは興味深い。急激に形成される新組織は葉でも枝でも同一レベルというのははり意味があるのだろう。

今後の展開として今考えていることは、指導教官が辞める前に提出した科研報告書56480045の11ページに記した
1)幼齢林分の現存量、とくに樹皮呼吸量推定のための非光合成器官の直径分布、年齢分布。
がまず順番として正式発表されるべきであろう。もうアカマツの枝の直径分布は学会発表でもほぼ正式に発表しているが欧米人たちには英語で発表していないので、知識として普及していないようである。今回の林学会ではあえてダビンチルールとして発表してしまったが、誰も問題にしなかったが。ただ平成元年に発表したこの時の主査が自分の学説に対する反論として扱い、枝の最大直径、最小直径を推定する方法が見つかればα=2として(ダビンチルール)簡単に推定できようなどの意見をつけて来た。ただ、欧米ではこの主査が最初発表した論文について、日本国内で誰もそれをその後検討していないのでと不思議がり、もし有用ならば欧米でも使いたいという意味のことを論文に書き込んでいる。最初の提唱者はすでに他界されており、小生が遅れたとはいえ、その発表をする順番にはあるとおもう。

年齢分布については、林試でもその報告書で、20年生2林分について、器官ごと、月ごとの呼吸を測定した。幹では試料木の幹全部を一括測定し、呼吸量と個体の直径、重量、表面積、生長量との関係を求めた。このうち直径との関係を各月の林分の直径分布から各月の呼吸量を計算し、合計して年呼吸消費量をもとめた。根の呼吸消費量は根の呼吸率を幹の呼吸率と同じとして求めた。

 枝、葉は年齢ごとに分け、林分の平均単位重呼吸速度を求め、その季節変化と枝、葉の年齢ごとの現存量の季節変化から、月ごとの枝、葉ごとの呼吸量を求め、合計して年呼吸消費量を得た。

林試の調べた20年生林分は各器官の呼吸量割合は、幹に16、枝23〜25、葉53〜55、根6%でと2林分であまり差がなかった。などと林試報告にはあるが、こちらも学内に提出した論文(予報!?)では、15年生アカマツ幼齢林分の純生産量や総生産量は林試の20年生アカマツ天然林よりもはるかに多い。

ちなみに提出した当時の値をそのまま述べると田無試験地の15年生アカマツ林の純生産量は、葉で6,27〜6.61トン、枝4.44〜4.8トン、幹で6.87〜6.81トンとなり、田無と鳩山では気温、降水量などはあまり差がないが、地位が異なり根の純生産料を3トンと仮定すると林分1ヘクタールあたり30.41〜44.52トンと推定された。(未発表)。したがって調べたアカマツ林の総生産量は最低でも53.15トン最高で70.13トンと30%ほど推定値に差が出る結果となった。しかも、学会発表が済んだ今では当年試の枝呼吸がこれに加わるからさらに大きい推定値となるのは確実で、慌てて発表してないでよかった、というところである。

(アカマツの枝の直径分布とその関係を利用した林分あたりの呼吸量の簡易推定に関する英語論文は小生が大学を卒業する頃には出ていてしかも、アカマツの枝のアルファは他と異なり、αの値は1.5とされそれを京都大系の大御所が発表した密度効果の3/2乗則関連でさかんに1.5という数値が強調され流布しており、卒業時、今更京大学院以外に進学するなんて、どういう了見だ!などとといなされた記憶がある。ちなみに小生の数年前に本学から進学した先輩は京大院であって、この方の論文は指導教官も、従って小生も引用させていただいている。さらに追記すれば、連合赤軍の某氏などは小生より一期上で京大林学科であったが学生中に退学していた!あの頃今西・四手井コンビがいて、世はまさに関西系というか西高東低の時代であったのかも知れない。しかし、時代の変化で教科書も改定され、当時の記録も最近の教科書には反映されていない。!)

この少なめの推定値でも総生産量は56.3トン(呼吸量35.7トン、63%)〜58.4トン(呼吸量37.45トン、64%)というレベルに及ぶ。これらの値は15〜20年生アカマツ林の推定最高値71,2〜78.4トン(蜂屋ら1989)よりも20%以上も低い値である。

鳩山町(宮山台国有林)の林分に比べると純生産量では2倍であるが呼吸消費量では1.3〜1.45倍程度であったがもう少し大となりそうである。

ただ、幹については宮山台の国有林での38D^2という関係について田無試験地のアァマツの幹では37.1D^という関係式が得られ、蜂屋らと有意差のない結果が得られている。

これは調査林分の中で選んだ最大の試料木についての覚え(の一部)である。こういうハンディな野帳にこと細かに記録をつけておかないと長期戦を覚悟して将来絶対役にたつだろうとの思い込みから始めた作業である。皆木主義なので一つ一つの枝が一本の木に何個あって、その年齢はいくつか、枝の直径は?、枝の長さ(節間長は?)は、葉の生重や乾重は?などが書き込んであるもののミニまとめ的なものである。

中でも最大の困難が枝の年輪幅の記録であり、枝では細かすぎて、識別がつかないものが結構多数あるものである。枝の年輪調査も林試などでもやっていようが、皆木ではない。小生は最大、最小枝から3本に一本の割合で枝の年輪調査を行なった。これは過去の先輩たちの事例から得た方法であるが。いくら技官たちが3名ほど援軍でついてもらってもおよそ1万弱の枝の個々の測定と記録、秤量などを含めると並大抵ではない。しかも小生にとっても初めての体験であり、相当気を使った記憶がある。

当時の集計用紙は各冊が残っているが突然開いてみても指導教官が田無試験地のことは忘却の彼方と謙遜するように、こういう手元に置くノートでもないと、昔のありのままにはにわかには戻れない。

およそパソコン代として約600〜700万円は使ったし、ブルガリアに行くまでにアップルのソフトウェア代として100万から150万ほどは注ぎ込んだ。しかし、いま手元にあるのは4年前からのiMacと一昨年の暮れからのiMacと予備機のMacBOOKProだけであり、手元にあった予備の外付けHDは10年ほど前会社のウィンドウズの予備に持ち込んだ160GBの外付けである。

上の手帳の右ページの最初に逆算という項目があるがこれは枝の年輪が途中で細かく消滅する傾向があるうえに3本に1本ぐらいの枝だけの調査では心元なく、枝の節間長と節間中央直径は最大、最小の2方向について計測してあるので、指導教官の資料からどの枝も呼吸速度がもとまる。

すると、枝の直径と成長量(ml)から枝の呼吸量を推定する重回帰式を介して逆算的に計測していない枝でも成長量が求められることをすでに学会で発表しておいた。(1993, 平成5年)
この連休はこれらの数値のチェックも始めた。ところが学会発表から今年で23年目ともなると流石に、逆算成長量を算出した式がどうやったか、重回帰式も指導教官の導出した枝呼吸関連の回帰式も手元にあるのに、思い出せない。

別に思い出さなくても導出したらいいだけと3日から5日にかけてあれこれと式をいじりようやくこれでいいと思える式に変形してやってみたが、結果がまるで合わない。

エクセルのデータは枝の材積や表面積は一致するのに、逆算値だけは合わない。それで気落ちしてしまった。丸一日ほどブランクをおいて4年前から使っているiMacが一番古く最近はあまり使っていなかったのだが、これに当時何の気もなく使っていたその時の逆算式が残っていないか落ち着いて探した。

すると各ファイルを丁寧にみて行くと一つだけ逆算成長量の計算をしていたファイルがどういうわけか一個見つかった。しかも、上に表示したように単回帰逆算や年齢別回帰逆算が並んで出ていた。その式を見るとあんなに悩んだ式とも違う以外にすっきりした式で表示されていた。実はその逆算式がどこか微妙に違う部分があるのでは!?という疑いも捨てきれず元の計算式を知りたかった。指導教官ではないが文章を考えるのも億劫になりましたという言葉を俺も実感中だぞと自分に言い聞かせ、若い時の閃きはいいが確認が一番大事という教訓を身にしみて感じる。

最初導出し計算チェックした式はこうであった。
3号木の枝のトップから計算に入ったが、枝の直径の0年枝は呼吸が今回修正したがもともと求められず、当時も断って0年枝の枝の実測材積を成長量におきかえていた。

当時の発表文書では、枝の年輪解析結果から推定した各個体の成長量を枝の個体あたりの全樹皮表面積で除した平均年輪幅は0.6〜0.8ミリ(再劣勢木を除く)であり、幹と異なり比較的個体差がない傾向があった。

中略 その際、枝の個体あたりの平均の成長量が計算される。その際、枝の個体あたりの成長量を考慮した樹皮呼吸速度の推定に重回帰式を用いるならば、直径を同じくする枝の成長量が色々と変化しても、それに対応する樹皮呼吸速度は成長量に比例的に変化すると期待され、その直径と平均的な成長量、その直径の属する長さから計算しても個々の成長の違いに対応した合計値と変わらないはずである。

中略
図ー1.は年輪を調べた枝の成長量と年齢別回帰式からの逆算成長量との関係を枝の各年齢ごとにまとめて関係を見たものである。重回帰式を介した年齢別回帰式からの逆算推定量は、最大値を示す3号木の1年枝のみ倍ほど過大な他は、特に偏向を示す傾向はなく、最大の値を含めて回帰係数は1.14隣となり危険率5%で1.0と有意差はない。当年枝部分の樹皮呼吸速度の推定に問題を残すものの、重回帰式と枝の直径分布を用いて成長を考慮した樹皮呼吸速度の近似値が求められることになる。


などと平成3年には林学会で発表していた。
昨年夏苦労して求めた重回帰式の各編回帰係数もMathematicaのVer.2.1で昨年と同じデータで正しく求めていた。しかも、最初に手許においた表計算ソフトFull Impactにマクロを組んで行列計算ができるようにして求めた結果も赤ペンで書き込んであり、同一の結果を得ている。

話がずれたので逆算式の話に軌道修正。

今回の二日以上かけて導出した逆計算式はこちら。

B1979の数値1.26が枝の直径。C1979の35は枝の長さ。この枝の推定呼吸速度はI1979の7.08944059である。そして逆算成長量は緑枠の5.16230014である。

これを1日以上置いて頭を冷やして探したら出てきた式を一目見てこれだ!!と思ったのがこちら。

緑枠の数値が多分正しい逆算値。呼吸推定値は同じなのに逆算成長量は18.067739となっている。これを、最大木の3号木全体に適用し、当年枝だけ実材の材積で置き換えると逆算成長量は6484.93mlとなり、6295.16と推定した値とほぼ一致する推定が出てきた。

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