日曜日, 7月 31, 2016

宮崎正弘の国際ニュース・早読み  (アメリカ大統領選挙は大激戦、ヒラリーは意外な苦戦に戸惑っている...)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)7月31日(日曜日)
          通算第4974号  <臨時増刊>
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 アメリカ大統領選挙は大激戦、ヒラリーは意外な苦戦に戸惑っている
  民主党大会で10ポイントの差を開く予定が、逆にトランプと並んだ
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 民主党大会はベラルーシのミンスクのホテルでテレビを見ていた。
 サンダース支持者がしらけきって、ヒラリーが登場すると「嘘つき」とブーイング。異様な事態となった。
 サンダースのヒラリー支持演説は、会場がざわついていた。

 通常、党大会の後の世論調査は、その党の候補者がリードする。ところが、民主党大会直後の世論調査は大激戦をつたえ、トランプとヒラリーが並んでいるではないか。
 ヒラリーはここで10ポイントほど差を開く計算だったから、「何故だ?」と思ったことだろう。

 ちなみにベラルーシの人々はトランプファンが多い。ロシアと共通して、ヒラリーは嫌いな人が多かった。

 ともかくアメリカで「トランプ熱狂」は醒めていない。
反ワシントン、反エスタブリシュメント、反ウォール街感情がこれほど強いとは、想定していなかった。
激戦のフロリダ州では、僅かながらトランプがリードしている。
この勢いでペンシルバニア、オハイオを抑えるとトランプの奇跡の勝利が射程に入ってくる。

 さてモスクワ経由で帰国したが、アエロフロート機はロシア人で満員だった。日本観光は、かれらにも人気があるのだ。

 相模原の殺人事件は、BBCが一行だけつたえたので、知っていたが、詳細は帰国して新聞を読んではじめて知った。
BBCは、世界のテロ事件の一環のように「KNIFF ATTACKER KILLED 19 AT CARECENTER IN SAGAMIHARA」だけだったから老人養護施設が襲われたのかと想像していた。

(帰国後、すぐに地方講演旅行に出かけますので、8月3日まで休刊します)。
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 文明開化、西欧化という福沢諭吉像を根底から逆転
  福沢は武士の魂魄を最も重んじ西郷を敬愛し勝海舟と榎本武楊を侮蔑していた

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渡邉利夫『士魂 福沢諭吉の真実』(海竜社)
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 日本人の福沢諭吉像は、とくに戦後、左翼思想の蔓延によって、歴史観がたっぷりとおかされたため、福沢は歪んで評価されてきた。
 論考の一部分を突出させ、重箱の隅をつつくような論評が多く、福沢を「西欧かぶれ」、「商業主義者」と断じたわけだが、せいぜいが『学問のすすめ』と『文明論之概略』くらいしか読んでいないからだろう。
『脱亜論』と『痩我慢の記』はあまり重要視されていない。そればかりかこの二つの作品に対しては悪評が多く、ときに福沢にはウルトラ右翼のレッテル貼りもなされた。
 福沢はときの政府を筆法鋭く批判するメディアを創刊し、死の直前まで健筆をふるったが、一方で朝鮮独立分子を支援し、留学生を自宅で扶養し、あげくには独立運動の闘士だった金玉鈞を匿った。つまり「武士の魂魄」を至高の価値として重視した稀な愛国者であった。
 福沢の思想の基本は「武士は二君に仕えず」であり、そして一番重要なことはマーター(殉死、殉教)であると言っている(福沢は「マルチムドム」と書いた)。
 したがって西郷への哀惜は尋常ではなく、その反面で、武士道の風下にもおけないのが勝海舟と榎本武楊であると筆誅を加える。激しい筆法、武士の憤怒の声が聞こえるほどの文章である。
 そうか、福沢は三島由紀夫の思想的源流ではないか。
 三島は二君に仕える石原慎太郎を批判し「公開諌言状」を新聞に書いたし、マーター(殉死)という文脈で「神風連の乱」を高く評価した。三島の檄文は福沢の脱亜論に通底するものがあり、この思想のあまりの近似を考えつつ読了した。
 
 評者(宮崎)は慶應義塾のライバル校に入学したため、福沢の名前は知っていたが、青二才の頃は戦後教育通りの解釈で、福沢を重視したことはなかった。
 ところが、学生新聞の編集に携わり、林房雄氏邸に頻繁に出入りするようになると、林は福沢の中津藩のとなり竹田藩武士の末裔でもあった所為か、福沢を公平にみていた。林はライフワークとなった大河小説『西郷隆盛』全二十二巻に挑んだが、大久保利通も公平に扱っている。
 そこで評者はあるとき思い立って大分県の中津へ出かけ、福沢諭吉記念館を見学した。近くには黒田官兵衛が築城した中津城もあるが、福沢記念館の展示のほうが面白かった。数年後、ある出版社から福沢を書けといわれ、特急で福沢論を仕上げたこともあるのだが、それは三十年以上も前、その後にまた中津へ立ち寄る機会があった。福沢記念館に出かけて、新しい展示などに見入った。
 こうした私的体験からも、福沢は間違って解釈されていると考えてきた一人である。
 渡邉氏の著作は、このような誤解を爽快に吹き飛ばし、資料と著作を正確に咀嚼された結果、従来とはまったく別の、真実の福沢諭吉、その本当の業績が浮かび上がってきた。
 本書は伝記、評伝というより、福沢の思想遍歴を論じた、斬新な「福沢論」である。


 ▼天は人の上に人を作らず。。。。

 福沢が尊き価値とした一つは自立自尊、すなわち「独立」だった。
 このため外国との不平等条約の撤廃もしくは改定なくして独立などあるか、という原則がでてくる。
 これは今日に日本の状況とまるで同じで、日米安保条約という不平等条約、核拡散防止条約そのほか、こうした不条理を受け入れてテンと恥じない日本ははたして独立国家と言えるのか。
 福沢は書いた。
 「今利害を別にして、人情を異にし、言語風俗、面色骨格に至るまでも相同じからざる、この万里外の外国人に対して権力の不均衡を想わざるものはそもそも亦何の由縁なるや。突突怪事というべし」
 渡邉氏はこう捉えて補足する。
 「国権そのものが外国によって暴力的に抑圧されかねない状況に、目下の日本は直線していていないか」として、次の福沢の箴言を続ける。
 「裡話に、さざえが殻中に収縮して愉快安堵なりと思い、その安心の最中にたちまち殻外の喧嘩異常なるを聞き、窃かに頭を伸ばして四方を窺えば、あに図らんや身はすでにその殻と共に魚市の俎上にありということであり、国は人民の殻なり。その維持保護を忘却して可ならんや」
嗚呼、まさに今日の日本の危機はまさに同じではないか。アメリカの核の傘と在日米軍の存在に安心して国家安全保障を他人に依拠し安堵している間に、南シナ海、尖閣は中国軍が侵略の牙を研ぎ、アメリカは撤去をはじめようとしている。
この預言的な福沢の洞察は、おそろしいほどに正鵠を得ている。

 福沢は「忠君愛国」についてこう述べている。
 「忠君愛国の文字は哲学流に解すれば純乎たる私情なれども、今日までの世界の事情においてはこれを称して美徳と言わざるを得ず、すなわち哲学の私情は立国の公道にして、この公道公徳の公認せらるるは、ただに一国のおいて然るのみならず、その国中に幾多の小区域あるときは、毎区かならず特色の利害に制せられ、外に対するの私を以て内の為にするのを公道と認めざるはなし」
 この最後の箇所を渡邉氏は「一国が衰退の危機に陥るような時期においては、死んでも国を護る気概をもつことが公道そのものなのだ」ということである。

 これが福沢の次の文章に繋がる。
 「自国の衰退に際して、敵に対して固より勝算なき場合にても、千辛万苦、力のあらん限りを尽くし、いよいよ勝敗の極に至りて始めて和を講ずるか若しくは死を決するは立国の公道」
 まさに大東亜戦争の特攻隊、硫黄島、三島由紀夫の諌死。すべては、この発想に繋がる。
 近づく終戦記念日、靖国に詣でる前に姿勢を正して読むべし。

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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 英国の金融の輪はシテイから属領、海外領土の強い絆だった
   BREXITによって、英国の金融帝国が脅かされるだろう

藤井厳喜『国家の逆襲』(祥伝社新書)
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 副題に「グローバリズム終焉に向かう世界」とあるように、本書のエッセンスが、この語彙に象徴的に抽出されている。
 つまりナショナリズムの時代がやってくる、と予想する本である。
世界に拡がる「トランプ現象」がなによりも雄弁に、アンチ・グローバリズム、そして反エリート、反移民という世界的政治現象を捉え直している。
この趨勢はどこへ向かうのか、著者の藤井氏は独自の視点から追求する。
 国境なき世界、国境なきマーケットという「幻想」の終焉が始まり、世界はナショナリズムの時代へ突入したとするのが藤井氏の世界観である。
 移民、トランプ、南シナ海、そして「パナマ文書」は一見ばらばらにみえて、実は通底している大きな水脈がある。ナショナリズムの台頭がそれであると俯瞰する世界観は、藤井さん独自の解釈と思いきや、じつは多くの識者もそうみている。
 英国で伝統的な二大政党制が、突如あらわれた第三党「UKip」に掻き荒らされ、いや政局を席巻され、BREXITに至った。
 フランスも第三党が大躍進、そしてアメリカでは共和党がアウトサイダーに「乗っ取られた」。
 金融政策のなかで、節税と脱税監視は、アメリカでFATCAが成立し、最初にスイス銀行が手を挙げたが、じつは、この流れはタックスヘイブンへの急襲となって、ついにはパナマ文書となるわけだが、金融界における「スノーデン事件」のごとき嵐となった。
 すなわちシティからケーマン島などの「クラウン・ディペンデンシー」(王室属領)。そしてその「外側」に英国の「海外領土」(バージン諸島など)といった、英国の世界戦略である「金融環」が崩れ始めるのである。
 これは「テロリストの資金ルート」を壊滅されるという欧米の合意の基底に、アメリカが発動したFATCAがあったからだ(FATCAは本書を参照)。

 次にBREXITだ。
 メイ新政権は年内に離脱通知をしないと言明しているが、「離脱交渉で、ドイツが懲罰的な悪意を持ち、これを長引かせたり、あるいはルール至上主義、紀律至上主義を振り回して、イギリスを追い込んだりすれば、単にヨーロッパ金融危機が長びくだけではなくイタリアなど他の離脱派の影響力の強い国にも悪影響を及ぼす」
 そして津波はチャイナに及んだ。
 「資金不足から、これまで外貨準備の一環として購入してきたアメリカ国債を」チャイナは静かに売却し始めており、15年に2920億ドル、政府機関債30億ドル、ほかに米国以外の債券1700億ドルを売却した。ほかにアメリカ企業の「社債」をチャイアは4000億ドル保有しているが、これも「売却対象にのぼる見通し」にあると藤井氏は予測している。
 本書は国際金融情勢の舞台裏を独自の視点から説き起こしている。
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1445回】    
――「頑迷固陋倨傲自尊・・・耻ナキモノハ利ヲ嗜ミテ・・・」(西島7)
   西島良爾『實?清國一斑』(博文館 明治三十二年)
 
   △
 日清戦争勝利直後の明治28(1895)年6月5日の某紙に、勝海舟の、こんな談話を見ることができる。

 「世界では百戦百勝などと喜んで居れど、支那では何とも感じなはしないのだ。(中略)一つの帝室が亡んで、他の帝室が代らうが、誰が来て国を取らうが、一体の社会は、依然として旧態を存しているわけだからノー。国家の一興一亡は、象の身体を蚊か虻が刺すくらゐにしか感じないのだ。/ともあれ、日本人もあまり戦争に勝つたなどと威張って居ると、後で大変な目にあふヨ。剣や鉄砲の戦争には勝つても、経済上の戦争に負けると、国は仕方なくなるヨ。そして、この経済上の戦争にかけては、日本人は、とても支那人には及ばないだらうと思ふと、おれはひそかに心配するよ」(『氷川清話』講談社学術文庫 2003年)

  「この経済上の戦争にかけては、日本人は、とても支那人には及ばないだらうと思ふ」と、勝は「ひそかに心配」しているが、西島の記すところに従うなら、「ひそかに心配」した勝の先を見通す眼力に改めて脱帽だ。

  西島は続けて「本邦商勢ノ微弱」という現実を前にしても、我が国の「領事ハ其意見ヲ揮フコト能ハズ商賈ハ其利權ヲ擴張スルコト能ハズ徒ニ彼等ノ高樓巍峩タルヲ見衣食車馬ノ壮觀ナルヲ見テ空シク羨望スルノミ」。つまりは「本邦人ノ愛國ノ元氣ヲ皷舞作興スルノ道ヲ講ゼズシテ徒ニ目前ノ小利ニ汲々シテ共同ノ利?ヲ計リ外人ニ拮抗スルノ策ヲナサズ講サズ悠々自棄シテ敢テ進マザルモノ果シテ何ノ心ゾヤ」と。「領事ハ其意見ヲ揮フコト能ハズ」を今風にいいかえるなら、「外務省や在外公館は無為無策で無能だ。国民の血税で賄われる給料、しかもバカ高い給料を貰っていながら、全くの役立たず。なかには反日的言動を得意気に弄している犯罪者まがいもいる。外務省ではなく、害務省だ」という批判・不満につながろうか。
だとするなら日本の外交当局は西島の時代も、それから120年以上が過ぎた現在も、役立たずという点では大同小異ということ。確かに、そうだとは思う。

 だが、よくよく考えてみると、日本人は外務省(=官)に多くを期待し、完全を求め過ぎるのではなかろうか。そうではなく、官なんて一種のお飾りのようなものと軽く考えておけばいい。民が官に頼らず、独立自尊・独立不羈の気概を持てばいいだけだ。

  有体にいうなら、「領事ハ其意見ヲ揮フコト能ハズ」ではなく、制度・機構・能力からしても「領事ハ其意見ヲ揮フコト」などありえない。外務省が何とかしてくれる。「領事ハ其意見ヲ揮」ってくれるなどという甘い考えはトットと捨てるべきだろうに。

 なぜ日本人は歴史的にも地理的にも恵まれながら、上海のみならず中国全土で欧米商人の後塵を拝してしまうのか。

  「予輩ノ聞ク所」では、上海在住邦人の3分の2は女性で、しかも「彼等ハ皆身ヲ外人又ハ清人ニ托スルモノナリ彼等ハ敢テ之ヲ醜業視セザルノミナラズ却テ揚々トシテ他ニ誇示スルナリ」。「此種ノ婦人」は元来が山家育ちで教育もなく「廉耻ノ何物タルヲ解セザルノ愚物」だ。「西人社會ニ於テ決シテ醜業」がないわけではなく、むしろ繁華街で堂々と営業し、「彼等西人ノ心魂ヲ蕩盡セシメ」てはいる。「彼等ノ醜体ハ寧ロ我ヨリ甚シ」い場合もあるほど。だが「彼等ノ醜体」が「外ニ暴露」しないのは、「他ノ強盛ナル働力ノタメ」である。つまり勢いがいいから、醜態が醜態として外に現れない。それに対して日本人社会全体が情けない状態だから、「此種ノ婦人」の醜態が露わになってしまうのだ、と。

  ここで「此種ノ婦人」に対する勝の呟き――「一体醜業婦々々と言つて軽蔑するが、それを善用すればたいしたものだよ」(前掲『氷川清話』)――が思い出される。
《QED》


【知道中国 1446回】    
――「頑迷固陋倨傲自尊・・・耻ナキモノハ利ヲ嗜ミテ・・・」(西島8)
     西島良爾『實?清國一斑』(博文館 明治三十二年)
  
   △
「一体醜業婦々々と言つて軽蔑するが、それを善用すればたいしたものだよ」との勝の呟きは、『氷川清話』の「海外発展」の一項に収められている。以前にも引用したように思うが、興味深い内容なので再録しておきたい。

  「海外発展という事は、貧乏で小ポケナ島国の日本にとつては最も肝要な事サ。しかしその行く順序がまるで?倒して居るよ。/まづ一番槍が例の女だよ。次がソレを顧客とする小商人やナラズ者サ。それからその地方が有望とふ事でもつて中商人が行き領事館ができるといふ始末さ。ソコで外国では日本人といふ奴はヒドイ奴ばかりだとなつて到るところ評判が悪く、万事警戒してかゝる。これもミンナ若い男共が意気地なく睾丸がない奴ばかりだからだ。/ソコになると外国の奴らは実に見上げたもので、まづ海外不毛の地には教法師が行つて伝道もすれば、医薬慈善の事をやる一方、地方の物産や事情を本国に報告して何々の商売が有利だなどと報告する。今度は資力余りある富豪が出掛ける、小商人も行く、女も行く、領事館が行くという風である。ソレであるから外国人はみなその地方では評判もよく、たとへゴロつきでも紳士となり、淫売でも貴婦人として待遇されるわけサ。/一体醜業婦々々と言つて軽蔑するが、それを善用すればたいしたものだよ。日本のケチナ外交官などでは利用方法も知るまいよ。ツマリ女などはホツておいて構はぬに限るサ。万一事の起つた時は、ソンナ奴は日本人では御座らぬと突き放していゝ事サ。日本の役人共は馬鹿正直で公私の区別を明かにせぬから困る。個人としては日本には悪徒も大分居るやうだが、国家としてはまるで馬鹿正直サ。」(前掲『氷川清話』)

  勝は「貧乏で小ポケナ島国の日本にとつては最も肝要」と認めながら、「海外発展」の順序が間違っている。順序が違うから、日本は「評判が悪く、万事警戒」されると指摘する。

  日本の場合は「一番槍が例の女」で、次が「ソレを顧客とする小商人やナラズ者」。やがて「中商人が行き領事館」になるが、その順番が結果として「日本人といふ奴はヒドイ奴ばかりだとな」り、「評判が悪く、万事警戒」されてしまう。それというのも「ミンナ若い男共が意気地なく睾丸がない奴ばかりだからだ」。どうやら、当時すでに「若い男共が意気地なく睾丸がない奴ばかり」だったことになる。勝からすれば、歯がゆかっただろう。

 一方、「外国の奴ら」による「実に見上げた」ところの海外発展は、「まづ海外不毛の地」に宣教師を送り込み布教という名の洗脳・宣撫、時に医薬をエサにしての人心収攬工作、次いで現地事情の徹底調査、商売の可能性が判明すると大中小商人(海外の富に群がるハイエナたち)が大挙して進出、かくして「女も行く、領事館が行く」。驚くほどに順序だっているわけだ。だからこそ勝は「外国人はみなその地方では評判もよく、たとへゴロつきでも紳士となり、淫売でも貴婦人として待遇されるわけサ」と、その手際よさを誉める。

 やはり海外発展の順序が、日本と「外国の奴ら」では反対らしい。海外発展において、「此種ノ婦人」が先陣を切るのか。それとも殿軍を務めるのか。それはともかくとして、勝の時代にも、「馬鹿正直で公私の区別を明かに」分けることが出来ない「日本のケチナ外交官」が、海外進出を目指す国家と国民の足を引っ張っていたことになる。かくして日本は「国家としてはまるで馬鹿正直」であるかどうかという問題に行き着くが、今もなおマッカーサー憲法を押し戴いているわけだから、日本は確かに「国家としてはまるで馬鹿正直」なのだろう。だから周辺の性悪な国々に、いつまでも言い掛かりをつけられるのだ。

 だが、「ツマリ女などはホツておいて構はぬに限るサ。万一事の起つた時は、ソンナ奴は日本人では御座らぬと突き放していゝ事サ」などと、「国家としてはまるで馬鹿正直」な日本やら「日本のケチナ外交官」が柳に風と受け流すことは・・・どだい無理な相談だ。
《QED》
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌7月22日付けに中国によるギリシアのピレウス港買収に絡んで言及された名古屋、新潟などでの土地の買い漁りについては、私もブログ『尖閣購入』
http://sns.orahonet.jp/blog/blog.php?key=11706
に書きました。御参考までに。
 (唯臥独村)



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(読者の声2)7月中旬、中国河北省での洪水で花園口 (Huayuankou) の戦いを思い出しました。
 昭和13年に黄河に沿った花園口というところに日本軍と国民党軍が対峙していました。
そこで、国民党軍が立てた作戦は、黄河の堤防を破壊して、日本軍を水攻めにするというものでした。
 もし水が日本軍の駐留地の方ではなく民家の方に流れたときは、日本軍がやったとデマ宣伝をする計画でした。これが、「Plan B」です。
水は民間の方に流れ、約百万人が溺れました。
国民党軍は、その場から逃げ、「Plan B」を実行しようとしたところ、日本軍が追いかけてきません。日本軍は破壊された堤防を修理し、民間人が住んでいるところから、水をポンプで川に戻し、おぼれていた百万人の内約十万人を救助しました。
 それを観て、国民党軍は、「Plan B」を実施することをあきらめました。その前年に起きた南京城陥落の場合は、「Plan B」を実行しました。
以前南京攻略に参加した日本兵二人から聞きましたが、南京郊外の村々で村民たちが国民党軍にあまりにひどく略奪されていたのを見てかわいそうになったそうです。トーチカの中で国民党軍に拉致された農民が銃に鎖でしばりつけられて逃げないようにしてあったのには、あまりにかわいそうでショックを受けたそうです。
ただし、この戦いでは、国民党軍は、「Plan B」を実施いたしました。
   (ST生、千葉)



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(読者の声3)フィリピン・ミンダナオ・ダバオ市在住です。水力発電調査・設計・施工管理コンサルタント会社経営をしています。
 ダバオ市では、ドゥテルテ大統領がマラカニアン宮殿・マニラ、に転居せず、ダバオで執務しています。
ダバオ市はたった150万人しか居ない、インフラ規模で、通信施設の規模・空港規模・道路交通許容量、水道・電気の許容量が小さく、特に水道・電気は3年ぐらい前から計画的に止められています。

 ドゥテルテ大統領tが就任してから、世界中の電話がダバオに集中し、特に南シナ海国際仲裁判定が出たあとは、ダバオでは国際電話のみならず国内携帯電話も繋がり難くなっています。私も先週は日本の銀行とのクレジットカード確認電話が、一週間繋がりませんでした。
きのう、やっと銀行につながり、日本からの目薬の発送代金が承認されました。
 航空券も、世界中から、マニラに居る外国大使も、皆さんがダバオに飛んで来るために、2週間以内は予約困難になっています。
 水道も頻繁に断水が増加しました。
恐らくは、大統領に面会するためダバオに来る政治家・経済人、及び観光客の増加に対し、ホテル優先にしていると勝手に解釈しています。留守宅の妻によれば、日本ではダバオ観光ツァーが出来たとのことです。
 計画停電は増加しておらず、今までどうりに、1時間停電週2です。
   (TF生)

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