火曜日, 10月 09, 2012


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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成24(2012)年10月8日(月曜日、祝日)弐
        通巻第3781号  特別増刊号
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(特別版 一挙掲載)

日本は「巨大なインポテンツ」だ
  リチャード・ニクソン元大統領、おおいに語る
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 (編集部より註) この独占インタビューは1984年、いまから28年前にニクソン元大統領の特別の好意によりNYの連邦ビルにあった「ニクソン事務所」で行なわれたものです。
当時、宮崎正弘がニクソン大統領の『リアルピース』の日本語版刊行に際して、翻訳を担当し、その序文代わりに補足的なインタビューを思いつきました。
収録にあたっては宮崎がニューヨークへ行き、84年4月6日、レーガン訪中の直前という慌ただしい空気のなかで、ニクソン氏自らが時間を延長するほど熱の入ったものとなりました。
なお、内容は28年前の世界情勢を踏まえての分析、予測ですので、なかには外れたものもあり、或いは予言のような発言もありました。この分を割り引くにせよ、ニクソンがいかに鋭利な感覚で世界情勢を観察していたかがわかります。
今日の日本を取り巻く情勢、世界の動きを判断する基本構造、本質的なものの考え方がわかり、28年後の再録は有益と判断したのです。

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▼「西側同盟」とはいったい何か
 
宮崎 最近、閣下が書かれた著作はすべて欧米では大ベストセラーになっていますが、この『リアル・ピース』はたぶん日本国内に限っていえば回想録をのぞいて最初の翻訳本になると思います。この本の前に書かれた『リアル・ウォー』より一足先に日本の出版市場にお目みえする予定です。

ニクソン そうですか。それで日本語版への序文の替りに、あなたがわざわざニューヨークまでインタビューに来られたのですね。
この機会を利用して日本の読者の皆さんに私からメッセージを述べてみたいと思います。
というのもこの本はやゝ短い文章なので、米ソ関係を中心にカバーしてありますが、日本に関しては「NATOと日本」と題した西ヨーロッパ諸国と結合した章で少しだけ論及しただけですからね。だからあなたの趣旨はよく了解しました。どうぞ質問を始めて下さい。

宮崎 早速ですが、この本のメインテーマとなっている「西側同盟」について最初にお伺いしたいと思います。
閣下の定義では「西側同盟」(というのも日本もその一員のはずですから)とは一体どのような種類の同盟なのでしょうか? 
軍事同盟なのでしょうか? それとも単に経済的な共同体と考えてよいのでしょうか?
なぜならこの議論は現在日本でたいへん大きな論争になろうとしておりますので……。

ニクソン まず私たちがその議論に入る前に了解しておかなければならないことは、米国と日本との同盟関係の存在です。日米は二国間の「日米安全保障条約」で結ばれています。もちろん米国はNATO条約で西ヨーロッパの同盟国とも結ばれております。
私が考えている「西側同盟」とは米国、日本、西ヨーロッパの、もっと密度の濃い同盟関係です。
たとえ現在の日米間、欧米間の条約関係とは異なるとしても、いまこの二つの同盟で結ばれた西側諸国は共通の難題を抱えています。それはいうまでもありませんが、目前にあるソ連の脅威です。日米同盟が目的とするところはアジア地域に於て同盟関係を維持、強化しながらソ連の脅威を抑止することにあり、NATOのそれはヨーロッパ地域でのソ連など侵略主義勢力の抑止です。
しかしソ連の脅威はこれらの地域を越えて進んでおり日本と西ヨーロッパがそれぞれ米国と共同しながらも単独で脅威に対処するという従来の姿勢では時代に適合しなくなってきました。これから日米欧がなさなければならないことは限定された地域を越え、世界全体を見なければならないことだと思います。

第二に軍事的側面について考えなければなりません。日本には憲法の制約があり、十分とは言えない防衛力しか保有していないことを私たちはよく承知しています。しかも日本の防衛費はGNPの一%を越えてはならないことになっている。
もちろんこの後者の制限は法制化されたものではなく政治状況によって定められたものであると私は理解しておりますけれども、広く一般的に日本社会では受け入れられていますね。
現在のところ日本は軍事的に主要な役割を果たすことは出来ません。周辺海域の防衛だけをみても日本は(米国に国の安全保障を)依存しています。
NATO諸国も基本的に防衛を米国に依存しているとはいえ、NATOには軍事的な能力が備わっています。その能力は日本とは比べものにならないほど高い。

宮崎 それは仰る通りです。しかし日本でも近年、大変真剣な防衛論争が起きております。強い防衛を主張している知識人もいますがこの動きは米国に伝わっていないと思われますが……。

ニクソン 米国へ依存する以外に、今のようなソ連の脅威を前にして日本が生き残ることは出来ません。
まず日本には核戦力に対応できる能力がありませんから。イギリスとフランスはこの能力を持っています。ただし英仏両国の核兵器は攻撃用ではなくあくまでも防衛用としてであります。
つぎに経済的に後退期にある環境で、日本の首相が勇気をもって決断し防衛費を増大したことは尊敬に価することであると思います。それを実行するときの政治的な難しさは私も十分に理解できますからね(笑)。

▼日本は核武装は出来ない

ニクソン しかし日本は可能な限りの努力で防衛費をもっと増加すべきなのです。とくに通常兵力に関していえば、日本の陸上兵力はかなりの規模といえますから、それに信頼に足るだけの能力を備えさせるべきですね。(戦略的にいえば)日本は核武装へは進めない。
私はその事実を実感しています。

宮崎 ただし日本にはその潜在能力はあります。
ニクソン 日本は核を持とうとすれば実に早急にそれが出来る能力があることを私も認めます。
でも日本の国民感情などを考慮すると日本が核戦力を持つことは不可能でしょう。しかし通常兵力に関しては、今日、日本は充実をはかる時代に来たのです。顕著なほどの通常兵力の増大と能力の拡充を日本ははかるべきときだと思いますし、日本にはその必要性があると考えています。
第三の側面が経済の分野ですね。この領域では全ての西側諸国の協調と発展が必要であることは言うまでもありません。日米欧は経済力の競争をしなければならない反面、この巨大な経済のパワーを一緒になって行使し共通の政策をとはらなければならない段階に来ています。

宮崎 そのことは本書のなかでも閣下がとくに強調されている点ですね。それでは具体的に「経済力行使」とはどのような意味を持つのですか?

ニクソン とくに私が強く主張したいことは(シベリアーパイプラインのときのように)対ソ経済政策を西側がバラバラでやっては意味が無いということです。私たち西側の経済力はソ連圏の三倍ないし三倍半かそれ以上あります。これを有効にムチとニンジンとして活用し、ソ連の風向きを変えなければいけない。それこそが日本を含めた西側全体の共同作業が必要な所以なのです。そしてソ連の悪い振舞いを西側の経済力行使によって制止できると私は確信しています。
ところが現在、西側はせっかくのこの繁栄した経済パワーを対ソ政策の手段として用いていない。
ちょうど「インポの巨人」のような状態となっている感じがします。
インポテンツだという理由は、西側各国がひとり勝手に行動をしているからです。私は米国と日本と、そして西ヨーロッパが一緒に束になって近い将来に団結でき共通の対ソ経済政策をとることが出来れば、たとえばアフガニスタンのような事件が世界の何拠なる場所で起きても効果的な措置がとれると信じています。
しかし西ヨーロッパは米国とあまり協調していないし、日本の一部も単独行動にでている。「ビジネスはビジネス」だと彼らは言ってますね。日本の場合、そうはいってもヨーロッパ諸国に比較すればずっと協力的ですけれども。

さて日本のことをもっと追求してみましょう。
典型例はペルシャ湾の問題です。とくに日本は世界中のあらゆる国々に関心がある。日本の工業生産には原料を必要とします。就中、石油は日本が一番多くペルシャ湾の石油に依拠しています。ヨーロッパもかなりの依存率ですが四〇%程度、米国の対中東石油依存はわずかに五%以下です。つまり中東の行く末に一番死活的な関わりを持つ国は、日本なのでしょう?
だからといって(一部の人々が指摘しているように)、日本がペルシャ湾まで軍事的にでていき、軍事的な役割を果たせるとは考えられません。同時に私は日本にはそれは出来ないと信じています。予想できる限りの将来において日本が軍事面でできることは、通常兵力レベルでの充実と発展という防衛努力です。
ところが日本には経済的なパワーが備わっている。日本はこれを行使できる。行使するべきです。幸いにも中曽根政権とレーガン政権は十分に理解し合っており、日米両国間の協調は進んでいるというのが現実ですね。

▼日米安保は改定されるべきだ

宮崎 日米間には二国間条約である日米安保条約がありますが、副大統領として来日されたときに初めて日本の再武装を公式にブチあげた閣下としてはよく御承知のようにこの条約さえ多くの規制があり条件があります。
もし日本がこうした新しい国際環境に対処してゆこうとするなら、現行条約下ではあまりにも規制されすぎ、条件が不十分であり、この安保条約をもっと双務的なものに改正しようと元内閣総理大臣の岸信介氏、加瀬俊一元国連大使などが中心となって「安保改定百人委員会」が誕生しております。
閣下はこのような双務的な日米安保条約への改定という考え方に賛同されますか?

ニクソン 私は多くの著作のなかでも明言してきましたが岸元首相を高く尊敬しています。日米安保条約の改定を私は支持しています。
私はたぶんあなたの生まれる前から岸信介氏とは交際があるのです(笑)。私は吉田茂、岸信介、佐藤栄作、そして現在の中曽根首相を高く評価しているものです。そのことは前作の『リアル・ウォー』や、とくに吉田茂さんについては『指導者たち』のなかでも書きました。彼らは優秀な指導者で、そして世界的な視野に立つ政治家です。

宮崎 いまお話のでた『リアル・ウォー』(文藝春秋より後日刊)も米国では大ベストセラーになりましたが、日本では抄訳が雑誌に紹介されただけで単行本としての翻訳は未だ出ておりません。
ただ私は英語版で拝読しました。たいへん力強く簡潔な文章で感動して読みました。閣下はとくにそのなかで「日本には核武装の能力があり、決意さえすれば明日にでもそのオプションを保持している」と書かれておられましたね。

ニクソン ええ、そうでしたね。もちろん私は日本人の戦争観、とくに核兵器に対しての特殊な感情を十分に承知しております。それは理解できることです。
しかし核兵器に反対する平和グループは米国にも西ヨーロッパにもあります。
私は日本の核保有は非常にセンシティヴな問題と考えておりますし、なんといっても日本人の心理状態が第一のことでしょう。
しかしもっと長期的な将来、もし世界のバランスが今以上に激しく崩れたとしたら、そのときは日本が核戦力を保有する必要性がでてくるかも知れませんね。一般的にいっても最近の日本人の若い世代の考え方は変わりつつありますし、私には良いことだと思えます。
いまの日本は軍事的にではなく世界的規模での役割を果たせる能力をもっています。西ヨーロッパのたとえばベルギーやオランダのような国々とは違って日本は防衛費を増大しても経済がそれに耐えることができます。彼の国々には出来ません。それゆえ私は繰り返し強調するように日本は通常兵力を充実するべきなのです。

日本は外交方面でも顕著な役割を果たすべきですが、私の言いたいことはこうです。
シンガポールのリー・カンユー首相は一九六七年に意味深長な発言をしました。日本についての発言でしたが「いまや世界には巨大な木々がある。一方でその木々にまとっている″つる草″の国々がある。巨大な木々とは米国、日本、中国、ロシアそれに西ヨーロッパである。ブラジルのような国々はそうなる潜在力があるけれども病んでいる。一方で基盤の弱い国々がある」と語りました。
リー・カンユーはそう言ったあとで「日本は世界的規模でもっと大きな役割をなすようになるだろう」と言い、「日本人は偉大な民族であり、日本人は満足しようとして行動を起こしているわけではないし、そうすべきではないが、トランジスタラジオを作ったのち、他の消費者物資を生産するのに成功した。彼らは巨大な利益のためばかりに励んでいるのではない。でも巨大なお金持ちになった。今世紀中には米国の富に迫るまでになろうとしている。なのに今のところは世界の政治舞台では活躍したくないと言っている」
と(リーカンユーは)続けて言いました。
日本の見地からみれば、日本は現状に満足しているわけではないでしょう。しかし世界的見地からすれば既に日本は、「インポの巨人」です。

宮崎 では日本はどうあるべき、どんな行動をとるべきとお考えですか?
ニクソン 日本が出来ること、なすべきことの第一は、西側とくに米国と共同してその大きな経済力を行使することです。この経済力レベルでの努力は西ヨーロッパ諸国にも希望したいところですね……。
第二に、日本はこれを重要な潜在的軍事力とを結合させることだと思います。表面にでた努力だけではないということです。

宮崎 関連して質問したいのは、本書(原書の67ページ)で閣下は「ヨーロッパが経済力と軍事力を有するという理由だけで米国が必要だというのではない。ヨーロッパには頭脳力があるのだ」と書かれておられます。
ところでこの「頭脳力」を日本にも期待されておられますか(笑)? 
もちろん日本人の政治感覚は国際的常識とは少し違うところがありますし、東洋の伝統と欧米では一致しない点も多くありますけれども・・・?

▼日本のブレーン・パワーヘの期待
 
ニクソン そう、それをこれから申し述べようと思っていたところなのです(笑)。
現在の世界は非常に危険な環境にあり、このなかで私たちは真の平和を達成してゆかなければなりません。すべての人々-ロシアの人々、中国の人々も含んで、平和な世界を希求し、そのための進歩に向って歩まなければならないのです。
私のいう真の平和の達成のためになんといっても米国が主要な役割を演じています。しかし米国が一人でこんな大事業をやるには力不足でしょう。あらゆる同盟国が何かを得意な分野で貢献してくれなければいけない。それぞれの立場で、この大事業に参画できるし、また事実そうして協力してくれていますね。
さっきも言いましたが私は日本に多くの友人がいます。政治家としては岸、福田、中曽根の各氏ほか実にたくさんの方々……。皆さんそれぞれが首相や、要職につかれていたときに大きな貢献をしてくれましたし、現在も進行中です。
ただし私たちがベストとして目指しているのは全世界で戦争を抑止し、真の平和を建設することであります。日本は今日までこの方面で高い役割を果たしてきませんでしたし、世界政治ではあまり目立たないことを旨としてきました。
アメリカ国民は日本人が優秀な頭脳の持主であることをよく認識しております。なにしろカリフォルニア州より小さい国土で、石炭がほんのちょっと採掘されるほかは何の天然資源にも恵まれていない。その日本が今日、自由世界で第二位の経済力を身につけるにまで発展してきたのですからね。
しかも今世紀中には世界一になるとさえ予想する人もいる。
いったい日本人に頭脳力がなくて、このような素晴しい偉業が可能であったでしょうか? 
この頭脳力が経済を建設し、発展させ、そして外交政策を決定するのです。経済力は世界的規模での戦略として使うことができます。その戦略を育てるのは人間の頭脳です。

日本は敗戦後に、廃墟から身を起こそうとしたとき「新しい世界」にこれから住もうと決意したはずでしょう。
現在の日本を、単に経済力があるという理由からではなく、自由世界が必要としているのです。ミニマムな防衛力とともに日本の頭脳力を自由世界は必要としているのです。
また日本は白身でも役割を果たさなければなりません。もちろん個々の限界はありましょうが、(世界政治に対する)日本の責任は大きくなったのです。
こういう風に言いますと「私たちは帝国主義時代の日本を悔んでいる。再び日本が大国として世界の舞台にでていったらよくない」と反論してくる日本の知人がいます。私はなにも帝国主義の話をしているのではない。私は日本の世界に於ける責任について語っているのです。この意味で、最近の若い世代の日本人はそんなことを言わない。
ですから私は日本のヤングが好きですし大いに期待しています。もっとも私のような意見はまだ日本の若い人の間では少数派でしょうけれども……(笑)。

▼中国が弱すぎることが脅威なのだ

宮崎 つぎに中国問題を伺いたいと思います。
閣下が大統領のときに米中関係が再開され、その後、急速に日本も日中条約へ、米国は米中条約へと進んだわけですが、現在の日中関係はむしろ米中関係よりも激しい速度と規模で進展しております。
とくに中曽根首相は三月に訪中した際に四千七百億円もの厖大な経済援助を約束してきました。
質問したい点はとくにこの経済援助と関連するわけですが、日本のかなりの知識人は、やがてこの中国援助が或る日、突如として中国の軍事力に転化され、それは結局のところ日本、韓国などアジア諸国への脅威として将来はね返ってくるのではないかと懐疑する声があがっています。

ニクソン 中国が軍事的に発展しえるという観察ですか?
宮崎 そうです。その懸念です。

ニクソン それはあくまでも将来の問題であり、現在の懸念ではありません。
私たちがここで確認しなければならないことがあります。現在の中国が軍事的に弱すぎることが脅威なのです。たとえば中東に於けるソ連の脅威はそれほど日本にはね返ってはいません。なぜならそこでは米国のリアクションを招来するからです。しかし中東への強烈な脅威もまた中国の経済が弱く、中国の軍事力が弱いことにつながり、それは、日本にとっての脅威ではありませんか。太平洋地域での安全を高めるには中国が強くなり軍事的な能力が強化されることが大事なのです。
だから米国も対中国経済援助、とくに技術供与を行なっていますし、日本はもっと多くの対中国援助をしているわけでしょう。私はその増大を強く支持しています。中国はもっと強くならねばならないのです。
日本の対中国貿易は、米中、欧中貿易のどれよりもはるかに巨額でありますけれど、私はもっともっと日中貿易が拡大されようと考えております。
あなたの指摘されたように中国に高度の技術供与を増大してゆくと、将来それは重大な軍事的脅威として日本やその他のアジア地域にはね返るという近未来を私は描きません。中国は近未来に限っていえばそんな超大国にはならないでしょう。

宮崎 では、中ソ関係はいかがでしょう? 再び中ソ同盟という悪夢を説く人が日本のチャイナ・ウォッチャーのなかにも少しおりますが。。

▼中ソの再同盟はない
 
ニクソン ロシアとしてのソ連をみた場合、それは膨張主義の歴史だったと私は認識せざるを得ません。
しかし中国は歴史的に膨張主義の歴史は、例外的な期間をのぞいて無い。例外は中国革命が成功した直後の革命輸出期ですね。この時期の中国は中国式共産主義の拡大、輸出に熱中しましたが、現在の中国はこうした膨張主義をやめています。
またロシア人、中国人を比較してみましょう。中国とソ連が戦争になることを両国は決して望んでいないし、もし両国が戦争を始めればそれは間違いなく世界大戦に直結するでしょう。
一方で中ソ接近により中ソの緊張が和らぎつつある状況をみて、中ソが再び同盟を結ぶ危険性があると主張する人々は日本ばかりか米国にもいますよ。
もし中国がソ連に戻ることがあるとすれば、唯一その事態は中国が西側に失望したときに起るでしょう。日本に失望したときも含めて、であります。
それゆえにこそ日本は中国とのより一層深い結びつきが必要であり、日本が主要な役割を担っているのです。米国も西ヨーロッパも中国との絆を強化してゆかなければならない。中国と西側は経済的な利害関係を確立しなければならない。もし絆を弱め、中国が西側との協力関係に絶望したなら、中国はソ連へもどるしか方法がない。しかし中国はそれを望んではいません。
たとえ中国が共産主義を好もうとも、国家的選択としてソ連との再度の同盟を好んではいないのです。

▼対日「技術封鎖」はない
 
宮崎 日米同盟は枢要な関係であり着実に深化している一方で、日本と米国は現在たいへん深刻な競合をしています。それは先端技術供与、ハイテク戦争の局面です。
今度はその「日米ハイテク戦争」について伺いたいのですが、米国の最近の動きをみておりますと先端軍事技術につながるテクノロジーをどうも米国は日本へ供与しない方向に進みつつあると考えられます。
とくに日本に対する「技術封鎖」政策に傾きつつあるように観察されるのですが、いかがでしょうか?

ニクソン 私はそういう風には考えておりません。どうして先端技術を米国が供与しなくなるのですか?

宮崎 具体的な例を申し述べますと、たとえばlC技術、複合材料などの先端技術ですね。これらは米国の先端軍事技術と汎用性があり、米国の圧倒的優位がある。これを日本の民間企業へも米国が供与するとは考えられない、むしろ輸出禁止政策に向かうように思うのですが?

ニクソン その点について私は確信を持って発言するにはデータがありません。しかし対中国技術供与と同じように、中国が技術先進国となりうるには、今後たいへんな時間を要するわけですね。
日米に関していえば或る程度の競争は避けることは出来ません。しかしこうした競合関係は悪いことではない。健全なものと言えます。
次いで、先端技術供与ですが、もしそれが軍事的な最先端技術であれば米国政府は対日供与をすべきではないかも知れません。それが最新の兵器に結びつくような技術であれば尚更のことでしょう。
しかし一方で、日本が既に開発し刷新してきた先端技術で米国は未だ持っていないものがあります。重要な技術は、それゆえにもっともっと日米間での協力、交流が必要となってきているのも事実です。
だからこの問題では回答は二つの流れがでてくる。

▼ローカル・コンテンツ法に反対

宮崎 次世代IC、第五世代コンピュータに関する技術はとくに日本が米国から欲しがっているものです。シリコンバレーでは日本企業が大いに活躍し、こうした最先端技術の取得に奔走しています。
しかし、たとえばVHSIC(超高密度集積回路)技術などはペンタゴンの予算でペンタゴンの主導のものに開発されているプロジェクトであり、こうした技術を米国は、日本がたとえ同盟国といえども「技術封鎖」するのではありませんか? 
もちろん日本が入手したいと熱望する理由はあくまでも最先端軍事技術ではなく次世代コンピュータ研究開発の競争上からでありますけれども。

ニクソン そうした専門的な分析を私は研究したことがありません。従って技術的分析についての確答は避けたいと思います。
ただ一般的な原則については申しあげられます。私自身はこの問題に対して、たいへんリベラルな見解を持つ者です。
二つのことを現在、指摘できると思います。
第一は米国経済の長期化した不況、一方で日本の非関税障壁などによる貿易上のアンバランスがある。日本の非関税障壁というバリアは米国にない政策です。日米両国はお互いが貿易を拡大し、競争を発展させていかなければならないし、こうした健全な日米の競合関係の拡大は望ましいことでしょう。
もし一方が貿易上のバリアを設けたら競合が生まれず、従って技術的な競争は同じ水準にとどまってしまいます。お互いのために良くないことです。
ですから私は、現在大統領選の(民主党の)候補者の何人かが「ローカル・コンテンツ」などの法案を支持し国内産業の保護主義的政策を提唱していることには反対しています。
こうした政策は間違いであり、たとえば日本の鉄鋼製品を締め出せと言うのはミステイクです。

つまり日本の鉄鋼製品が米国にこなくなると米国の製鉄業界はむしろ技術競合に堪えなくなると同様に、日本がこのような保護主義政策を追従することは日本の技術発展に障害が出てくることを意味します。ただし米国の大統領選挙中は熱い論争があっても、訴える力のある安易な論理の方が横行しがちです。
長期化した不況の期間に考えたことがあります。不況は経済を弱め、弱められた経済力を背景としては外交政策も弱められます。また弱まった経済がむしろ保護色の濃い孤立主義、貿易上の保護主義を生むのです。
これらの考え方は間違っています。
最近米国の景気が回復してきました。同時に保護主義も孤立主義も力を失なって下降していった。これでも明らかなように、経済力が前向きの発展を与えるということですね。そのことであなたのハイテク問題の質問への回答としたいと思います。
最後に強調しておきたいことは、日米関係は今日も将来も極めて重要な関係であり大切に発展させていかなければいけないことです。やゝ簡潔なきらいもありますが、こうしたことでこの本の日本語版へのメッセージとさせて頂きたいと思います。
 
宮崎 長い時間を割いていただき有益なお話を伺えました。有り難うございました。

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(編集部から)この再録作業にはスキャン、文字化などで深井貴子、田村誠・両氏のご協力を得ました。後日、写真、サイン本などを添えてHPにアップします)
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