火曜日, 3月 30, 2010


先日、匿名氏の数回の訪問を受け、谷山・志村予想を提出した志村五郎教授の最近の著作なども紹介いただいた。
http://9010.teacup.com/1942may/bbs

で、花子さんが教授の著作の評判を聞いて、読みたいなどとあったので、検索したらすぐにアマゾンでの紹介へ移動し、注文できた。その際、ついでにというか、こっちが本命かも!?と思い、高瀬正仁教授(現、九州大学)の岩波新書版の『岡 潔 数学の詩人』なる本も一緒に注文した。
今日、仕事の合間に、数回に分けて読み継いできて、何とか読了。

久しぶりに、研究姿勢に鼓舞され、また、岡潔博士の研究テーマに関する各種多様な面からの業績紹介を見て、わからないながらも、以前よりいっそう近づけたと思った。

最初は、梶原先生の紹介によって、『岡の定理 正則領域⇔-logdz)が擬凸
を示される等、岡先生は正則関数の存在領域である正則領域を擬凸で特徴付け、
岡の定理 正則領域⇔擬凸領域 なる4半世紀にわたり未解決であった、Leviの問題を肯定的に解決され、多変数関数論に金字塔を自立された・・・』「大学院入試問題解説 理学工学への数学の応用」(現代数学社、1991年5月、奈良女子大学数学専攻院試)で初めて知り、なんどか読み返し、数ゼミの記事などをふくめて、友人にメールで紹介したりしたこともあった。

先生の仏文原稿もいまではネットで読めるように配慮されており、イントロぐらいなら、門外漢でもそのかおりをかいま見ることができる。それにしても、数学関係者からも、いまだに関心が持たれているようで、喜ばしい。

『現代的に表現すれば、Hermite形式が領域Dの各点で反正定値な関数uを擬凸関数fonction pseudoconvexeと呼ばれた。(命名された)必ずしもC級でない上半連続なuも超関数の意味で偏微分不等式を満たせば、擬凸と呼ぶ。なお、フランス人は擬凸関数を、多重調和関数fonction plurisousharmoniqueと呼ぶ。n=1、すなわち一変数のときが、劣調和関数である。n実変数の凸関数uの等高面の内側ucは凸領域でであるが、n複素変数の擬凸のそれは、擬凸領域である。複素空間の凸領域は擬凸であるが、逆は必ずしも成立せず、擬凸領域はある種の関数論的凸性を持つ領域である・・複素n次元空間Cnの領域Dの各点から境界∂dまでの距離をdとするとき、』上に引用した岡の定理へと続くように紹介されている。

高瀬教授の著述によれば、『昭和9年頃にさかのぼるが、岡潔はハルトークスの逆問題(上述、Leviの問題と同義)の解決に多変数函数論研究の意義を見て中心問題に設定し、クザンの第一問題、函数の融合法、函数の近似の問題、それに境界問題などの諸問題の解決を組み合わせることにより、この中核の問題を解くという大掛かりな構想を立てた。』pp21。岡先生の著作に、私も1960年代に少し回した経験がある、卓上の機械式計算機を、三ヶ月ほど回して腕が大変だるかったと回想されていることに、疑問をもったのであるが、函数の近似の問題も視野にはいっておれば、当然の帰結に思える。函数の近似関連では、不動点定理が用いられるということも、梶原先生の紹介で初めて知った。

『ハルトークスの逆問題を中心に据える事自体すでに岡潔に固有の思索の世界での出来事であり、しかも問題が提示されるまでに非常に長い時間がかかっている。構想が定まったと見られるのが、昭和9年の年末、第一歩が踏み出されたのは昭和10年の始めの事である。』(前掲書)

読み終わっても、何度も再読しなけらば、全貌理解はおぼつかない。最初の10ページ目にある、多変数函数論のはじまり、なるコラムからアーベル積分を選び、ネットで検索。すると、何たる偶然か、
http://reuler.blog108.fc2.com/blog-entry-126.html
なるサイトへ誘導された。ここをちょっと読むと、岡潔関連の記述がどっさり。高価なるゆえ、さすがの私も尻込みした、高瀬教授の岡潔評伝の記事もしっかり載っているようで、最近の静かなる岡潔ブームの潮流をかいま見た気がしたところである。
(岡潔先生を語る92)天衆の挨拶をうける
は、今日読んだ本の最後の方に載っている話で、文庫本ではもう少し簡略化されていた。それで、全集のほうには、もっとこのように詳しく出ていたのだろうと、推察した。



>
なかのひと

0 件のコメント: