金曜日, 5月 25, 2007



1938年5月13日(金)の午前3時ごろ、首都東京の政治の中枢にちかい虎ノ門界隈で、一台のビッグバイクの事故が起きた。満鉄ビルの角をまがりアメリカ大使館へ向かい、突き当りT字路を左折したところで、大使館の南側石塀に激突した。バイクはかなりいたみ、散乱した金属片の合間に、男の歯が何本もこぼれていた。大使館警備の警官によって第一発見となった。

かなりの重症であって、普通ならとうに気絶しているはずだが、その男が、稀代のスパイ、リヒアルト・ゾルゲであってみれば気を失うことは許されなかった。仲間の無線技師に連絡をとってもらい、コートのポケットのドル札と機密文書を手渡し、家の処理も頼んだ後で気をうしなった、という。かなりの飲酒の後の事故だという。

そのおかげで、彼の身元は割れなかった。ドイツ大使の奥さんともできていて、当時すでに関係は終わっていたが、一縷の望みをつないで、大使婦人がよく見舞いに来た。ドイツ人社会では、何かと大使婦人が、病人が待っていますから、と会合を途中で退席することから、かなりうわさになっていた。もちろん、オットー大使もいずれ気づくことになる。

2.26事件当時、陸軍省が、決起部隊と連絡を取る各部局の電話盗聴をしていたレコード盤が出たというかなり昔のNHK番組でも、当時を回想して、馬奈木大佐だったと思うが、ドイツ大使館がそばにあり、ゾルゲが大使らとともに、経過を見つめていたと語っていたのが印象的だった。




篠田監督が映画でスパイ、ゾルゲを最近製作したが、ロケ地が埼玉県本庄の早稲田キャンパス近くということもあって、改めて、ゾルゲなるスパイとは、いったいなんだったのか興味があって少し調べてみたくなった。英語の本が最初に出て、これはその後、ゾルゲの第二?の故郷ドイツで出たということで、紀伊国屋で買ったが、やはり第二外国語、読むのがしんどく英語版を丸善に頼んだら、絶版ですとのつれない回答だった。

その後、だいぶたって、新潮文庫「ゾルゲ・引き裂かれたスパイ」として原著の英語版の翻訳が出ていることを知った。

彼がどんなバイクに乗っていたのかまでは出てこないようだ。ま、しかたがないか?

あやしい電波が都内あちこちから出ていることはすでに知られていたが、組み立て式のかばんに収まる無線機で、短時間で打ち切って移動してしまうので、それがもとでつかまることもなかった。きっかけは、ふとしたことから逮捕した女性共産党員の取調べからもれたことから足がつき、ともに死刑になった尾崎らといっしょに逮捕された。

それはともかく、いづれ触れるかもしれないが、ライシャワーやドナルドキーンなどを育てた、セルゲイ・エリセーエフというロシアの富豪の息子が夏目漱石がいる東大へ留学し、ハーバードへ移って、多くの学者を養成した。1937年にハーバードで東洋語学部を新設することがきまり、初代学部長として、外国人ではじめて東京帝国大学を卒業したエリセーエフ教授が就任したという。




このエリセーエフ氏はゾルゲと異なり、対日穏健派とでもいう立場であろうが、学生時代はやはり本郷や根津の界隈を、当時珍しい大型バイクを乗り回し、かなり目立った存在だったらしい。そういえば、昔、帝大などに「遊学」できる学生は裕福な階層出身者に限られており、東京都知事だった美濃部博士も学生時代は、ヨットなどとならんで、バイクを乗り回したという。その回想を聞いて、テレビの司会者だった小川アナは、それじゃ、亮吉ではなく音吉だったんですね、などと応じていた、かなり昔の思い出。

現都知事も、三宅島あたりで、バイクイベントを計画されているようだから、若いときは多分お乗りになっていたのかもしれない。たとえ乗らなくとも、弟裕次郎氏は、映画の中などで乗っていたようにおぼろげに記憶しているような錯覚を覚える。



この画像は、sho様からいただいたバイク雑誌、クラブマン;1993年2月号の表紙裏に載っていたもの。つい、戦前というと、モノクロのイメージで捉えがちで、バイクも、戦後の国民の足としてスタートした経験から黒というイメージに傾きやすいが、これを見ると、やはり夢の別世界のような存在として描かれている。きっと、このようなカラフルな、たぶんハーレーあたりを外人が乗り回すと目立っただろうことは容易に想像できる。

2 件のコメント:

sho さんのコメント...

こんばんは~。

今日はウイークディの疲れもあって、一日中家でゴロゴロ。BIG1とは、家の近くを軽く走った程度です。

明日はカミサンがフリーマーケットに出店するということで、朝から荷物を運んだり作業員の役目を指示されています(^^;

最近、かなり暑くなってきましたね~。今日は、夕方BIG1に跨りましたが、それでもちょっと渋滞にはまると水温は簡単に100℃を超えるようで、ファンも結構回っていました。
6月に入ると梅雨の季節ですし、梅雨が明けると本格的な夏到来ですね。

パソコンの方、おかげさまで順調です。DVDレコーダーをつなぐとか、少し負荷をかけると電源が突然落ちるような症状はまだ残っていますが、普通に使うぶんには支障なしということころです。新しく撮った画像などはすぐにDVDに焼いて、万一に備えています(^^)

nature さんのコメント...

どうも、家のパソコン、コメントの反映が遅くて、気づいたのは日曜夕刻、遅くなって相すみません。

ツーリングレポ、期待したのですが、いろいろと以前から予想されておったような事態もあったようですね、しばらくは
両輪の舵取りが続きそうですね、慣れるまでは、^^;)。

おできになるお子さんだったら、塾通いもまた励みになって新鮮かもしれませんね。私の時代もsho様同様塾なんて行かなくて済む時代でしたが、今は
必要悪を通り越して、無くてはならない寺子屋みたいではないんですかね。

私も家庭教師は少しやりましたが、できる子をもつとしんどく、うかうかできませんでしたね。